《教員採用試験で何がおきているのか》(2021年2月5日)


 令和2年度(令和元年実施)の小学校の教員採用試験の倍率が過去最低で、全国平均で2.7倍となったという記事が出ました。 文科省のサイトに以下の情報が出ています。

 令和2年度公立学校教員採用選考試験の実施状況

 小学校の教員採用試験競争倍率が、福岡県1.6倍、佐賀県1.4倍、長崎県1.4倍、北九州市1.5倍、福岡市3.3倍となっています。
令和3年度(令和2年度実施)の倍率については、まだ文科省のデータはでておりませんが、以下の情報にあるように、福岡県1.4倍、福岡市1.9倍、佐賀県・大分県・長崎県それぞれ1.4倍と、前年と同じ倍率低下の状況にあります。

 小学校の教員採用倍率が過去最低。なぜ倍率低下は起きているのか?

 倍率が下がっている理由は、採用者数が多いからであり、2000年前後と比べると4倍の開きがあることがわかります。倍率低下が即、教員の質の低下につながるものではないと、上の記事ではコメントされていますが、やはり危惧するところです。このような状況下、文科省から、令和2年3月卒業者・修了者における教員就職数などのデータが発出されました。

 令和2年3月卒業者の大学別就職状況[教員養成課程]

 リストによれば、本学は、大学院進学者・保育士をのぞいて計算した教員就職率が81.5%であるとして、全国3位に位置しています。(九州地区では大分大学に次いで2位)学生の頑張りにまずは拍手を送りたいと思います。しかし、この結果を詳細に分析する必要があるでしょう。

 本学卒業生597人中、正規採用は335人であり、臨時的任用が113人です。教員養成課程の卒業生数は平成28年度カリキュラム改革により、生涯教育系が廃止されたことに伴い、前年より80名以上増加しています。初等教育教員養成課程は、以前に比べて50名以上の増です。上記に述べたように、令和2年度教員採用試験、特に小学校は過去最低の倍率であり、例えば福岡県は1.6倍でした。
本学卒業生の教員就職率を、正規教員採用率で計算すれば、その割合は約56%です。臨時的任用の割合については、他県に比べて多いように見えます。

 これらからわかることは、昨今の教員採用試験の競争倍率低下の中でも、正規での合格を勝ち取れなかったと見える学生が割合多いこと、そして卒業生のうちの、実に250名以上が正規採用の教員とならなかった(なれなかった)ことです。福岡県は政令都市を二つ抱えており、県と政令都市あわせての採用数はかなり多く、しかも競争率が低い状況にありながらです。その理由を我々は考えなければなりません。

 他校種免許(例えば中学校英語などの)加点などの優遇措置があることや、下記の記事にあるように、複数の教員免許を保有している人材を求める傾向が強まっていることを、執行部はどのように考えているのでしょうか。

 教員免許併有へ 教育実習、小学校・中学校どちらでも単位認定可能に 審議まとめ案

 令和2年3月の卒業生は、カリキュラム改革1期生です。初等教育教員養成課程の学生にとっては、卒業要件の小学校1種免許以外の中高教員免許の取得が相当難しくなりました。

 先の記事に書きましたが、小学校における教科担任制は中教審の答申として挙げられ、その方向へまもなく転換します(すでに各地で転換しています)。

 卒業生が、小学校現場で不安を感じることがないことを祈っています。が、複数の教員免許を持たせずに現場に送り出した卒業生に対して、大学からの説明とフォローアップが必要なのではありませんか。大学が、小中学校9年間を見通したカリキュラム改革を、今後早急に総力で行うべきであることは言うまでもありません。
(この問題は続報を出します)