《松田正久先生のご講演内容の報告をいただきましたーその1》(2017年8月9日)


 8月4日に行われた松田先生のご講演概要の報告をいただきましたので、2回に分けて掲載いたします。 ご講演内容から、高等教育の場としての本学が、民主的な教育を遂行する大きな責任を負うことを、改めて確信いたします。

 (以下報告)

 1.松田先生の学生時代の恩師、坂田昌一博士の言葉を引用されました。平和を考える松田先生の立場は、坂田先生の考えを継承しています。
「科学者は、科学者として、学問を愛するより以前に、まず人間として、人類を愛さねばならない。」(1953)
「大学は体制の論理によって動くのではなく、学問の論理によって動いていかなくてはならない。そういう意味で学問の自由が大学の本質である。」(1969)

 2.次は「教育とは何か」というテーマでしたが、ここでは宗像誠也とフランスの小説家、ルイ・アラゴン(1897-1882 )の言葉が引用されました。アラゴンの「教えるとは 希望を語ること、学ぶとは 誠実を胸にきざむこと」という言葉は、教育の本質を的確に捉えています。

 3.教育と世界の取り決めについて、以下のような例を挙げて、順次説明されました。

 1)「国連憲章(1945年6月)」

 2)「世界人権宣言」
前文「・・・世界人権宣言を常に念頭に置きながら、加盟国自身の人民の間にも、また、加盟国の管轄下にある地域の人民の間にも、これらの権利と自由との尊重を指導及び教育によって促進すること・・・」

 第26条 
 1「すべて人は、教育を受ける権利を有する。・・・高等教育は、能力に応じ、すべての者にひとしく開放されていなければならない。」
 2「教育は、人格の完全な発展並びに人権及び基本的自由の尊重の強化を目的としなければならない。」

 3)「教育における差別待遇の防止に関する条約」

 4)「国際人権規約」は、特に13条の教育が人格の完成、尊厳において、人権と自由を尊重することを謳っており、我々はそれを遵守しなければなりません。

 第13条
 1「この規約の締約国は、教育についてのすべての者の権利を認める。締約国は、教育が人格の完成及び人格の尊厳についての意識の十分な発達を指向し並びに人及び基本的自由の尊重を強化すべきことに同意する。」

 5)「学習権」規約、子供の権利条約

 6)「高等教育世界宣言」は高等教育が民主主義や平和を根本的に支えているものであることを、高等教育の場としての大学は守っていく責任を負うことを謳っています。

 (ユネスコ 高等教育世界宣言 1998年)
前文「・・・高等学習と研究は、今や個人・地域共同体・国家が文化的・社会経済的に環境を損なわず発展するための不可欠の要素となっている。・・・教育は人権・民主主義・持続的成長および平和の根本的な支えであり・・・」

 7)「高等教育教員の地位に関する勧告」は、専門職の責任者としての高等教育教員が、他からの干渉を受けることなく、教授する権利を持つことこそ、学問の自由を支える役割を負うことを強く訴えるものです。

(ユネスコ 高等教育教員の地位に関する勧告 1977年)
「Ⅵ 高等教育教員の権利及び自由 
 28 高等教育教員は、いかなる干渉も受けることなく、一般に認められた専門職としての規範(専門職としての責任並びに教授の水準及び方法に関する知的な厳格さを含む。)に従って教授する権利を有する。」

 4.我が国の高等教育の特徴については、日本においては、公的負担が極端に低く、私的割合負担が大きいこと、大学数、学生数とも私学依存が大きいこと、に加えて、以下の問題点が指摘されました。
1. 授業料が国公私ともEU諸国に比して極端に高く、韓国と並び最高額、奨学金受給率が低く給付制ではない、
2. 教員一人当たりの学生数が多い、初中等教育では少人数化が進まない、
3. 初等・中等・高等教育全てで教員が多忙(大学では教材開発支援部門が未整備など教育支援部門が劣悪)
4. 研究環境の劣悪性(研究費、支援部門、設備、環境、他)、競争的資金の増大
5. 大学の格差と差別化の推進(指定国立大学、・・・)
6. 進学率は、まだ低い⇔経済的負担が多大⇒ブラック奨学金
7. 学生の自治意識が希薄
8. 子どもの相対的貧困率が高い(~16%)

(報告その2に続く)