《文科省から大学への現役出向がもたらしたもの》(2017年3月13日)


 『文芸春秋』4月号に興味深い記事が出ています。

 いま世間では、文科省の天下りが大きな問題となっていますが、さらに大規模に、文科省が大学を都合良く利用している実態が明らかになってきました。

 それが文科省から国立大学法人への「現役出向」です。

 出向してきた文科省職員が就く大学内のポストが、理事、副学長、事務方トップの事務局長といった学内の主要ポストであり、しかもこれら役職員の人件費は、すべて国立大学法人に措置された運営費交付金から捻出されているのです。

 福岡教育大学は単科大学という規模の小ささにもかかわらず、理事、副学長、教授、事務局長と4名も現役出向として在籍しており、しかも平成28年度からの学長選考会議議長は、『文春』で天下り疑惑が報じられた、元文科官僚で目白学園理事長の尾崎春樹氏なのです。

 学内に支持基盤がない学長は、経営協議会や教育研究評議会での支配を盤石にするために文科省の出向者に依存し、文科省としても、職員のポストの確保や、出向者を通じての大学の遠隔操作のためにそれを歓迎する、という癒着の構造が見えます。

 さらに驚くべきことに、本学では、前学長の寺尾慎一氏が現在副学長として学内天下りしています。寺尾副学長は、現在、講座と並ぶ位置づけの教育研究組織である「教職教育院」の院長を務めていますが、なんと職務上の位置づけが、事務職員であることが判明しました。

 3月10日の教授会において、教員から「教育研究組織の長を教員でない寺尾氏が務めることはできないのではないか。このようなことは大いに問題である」と抗議が出されましたが、教授会を主催する立場の教育学部長は「それのどこが問題なのか」と一方的に切り捨てました。

 もはや、教育も研究も、行政化が極端に進んだ本学からは、アカデミズムは急速に崩れ去りつつあります。 他大学へ移籍(割愛)する教員数は加速する一方ですが、基本的に後任補充はされないため、残った教職員の負担は増加するばかりです。

 他方、現役出向や、学長を退任後教員でない立場で在籍する寺尾副学長を含め、教員を定年となったのちも居座る役職者といった方々の数は、減るどころか増加の傾向を見せ、結局のところ減少した教員人件費は、それらの方々の雇用のためにすべて用いられているのだと思うと、怒りが沸いてきます。

 学生の教育用に用いるべき教育研究費が不十分でありながら、このような役職者の人件費を捻出し続けている大学法人の責任者として、学長に経営センスがあるのか大いに疑問です。

 学生も保護者も教職員も、もっと怒りの声を挙げるべきではないでしょうか。