《シンポジウムのご報告です・・その②》(2017年2月12日)


 中島亨先生のご講演内容は以下の通りです。

 小学校英語教科化については、平成30年度から段階的に試行され、平成32年から全面実施となっている。現在は英語で活動し、英語に慣れることが主となっているが、最近文科省から出されているプランを見ると、現在とは異なって、中学校で行われている英語を前倒し的に導入する発想も見てとれる。

 それには問題もあるが、そのように進まなければならないのならば、小学校教員には、中学校英語に近い教科教育の力、英語の指導力が求められることになる。つまり、ただ英語を話せるというようなことではなく、英語に関する学問的知識がこれまで以上に重要となってくる。

 言語学や英米文学の基礎的な知識が、英語を教える教員に不足していることから、以下のようなことが教室で通常行われており、英語の楽しさ、奥深さが子どもたちに伝えられていない現状がある。

(1)ABCの歌について
現在は日本でよく知られている方が英語の教室で用いられており、韻が保たれているオリジナルの英語版が使用されていないこと

(2)語順について
英語学の知識が不十分なため、動詞と目的語の位置が逆になることがしっかりと教材化されていないこと

(3)英語の発音について
「音の違いに気づかせる」目的を持ちながらも、具体的にどう違うのか、教師が認識できていない

(4)英語における文化的知識について
たとえば「ハンプティ・ダンプティ」を、『鏡の国のアリス』に出てくるキャラクターとして知る人は多いが、そもそも英語の伝統的な歌(マザーグース)に出てくるものだといった文化的背景の尊重、他方で、多様な文化圏の人と英語でコミュニケーションする際の理念などをきちんと教授すべき。

 そのようななかで、福岡教育大学では、英語6コマが必修となっていた従来のカリキュラムを変更し、必修2コマに減らしている。その減少分は課外に新設された英語習得院で学べばよいと考えられているのかもしれないが、英語習得院のカリキュラムを見ると、英語の教養や英語学を身につけさせることを目指したものにはなっていないようである。

 これからの小学校英語科を担当する教員には、自分で小学校英語のカリキュラムを組めるようになることを求められるであろう。 だからこそ、大学はそのような力を持った英語教員を今こそしっかり育成するべきである。