《奈良教育大学の『大学概要』との対比》(2016年8月13日)


 前回の記事で、福教大の最新版の『大学概要』が、生涯教育課程に対する差別を明示していることを批判しました。参考のために、他の大学の事例を紹介しましょう。

 京都教育大学は平成18年度、宮城教育大学は平成19年度、奈良教育大学は平成24年度に新課程(教員免許状取得を卒業要件としない、いわゆる「ゼロ免課程」)を募集停止(改組)し、教員養成課程に特化していきました。このうち、比較的最近の奈良教育大学の『大学概要』で、新課程募集停止後の記載を確認することができます。

奈良教育大学>大学紹介>広報誌・刊行物 のサイト

 

で、2012~2016年の大学概要を閲覧できます。

 2012年は新課程を募集停止した年度ですが、その年の大学概要8頁では、募集停止後の組織機構図を示すとともに、下に「平成23年度までの教育学部組織図」として新課程の総合教育課程も記載しています。そして、教育学部の説明として、「学校教育教員養成課程」「総合教育課程」が併記されており、両者に色の使い分けなどの差別はもちろんありません。

 こうした記載方式は、その後も同様です。重要なのは、2011年度の入学生が標準修業年限の4年を経過した後の、2015年の大学概要でも、従来の記載方式を継続していることです。総合教育課程の学生が大方卒業した後でも、学生が学び続けている限り、なおその存在を尊重しているのです。

 2016年の大学概要では、教育学部の説明からは「総合教育課程」が消えていますが、組織機構図の下の説明では「平成23年度までの教育学部組織図」が残っています。見たところ、教育学部の説明事項の増加や大学院の改組に伴って調整が加えられたようです。

 以上のように、奈良教育大学では、新課程の募集停止後も、それを差別して記載するようなことはなく、むしろその存在を客観的に記載し続けていると言えます。

 なにもわれわれは、奈良教育大学をことさらに賞賛しようというのではありません。特別な差別的意図などがなければ、奈良教育大学のような記載方式になるのが当然であり、本来特に注目に値するようなものではありません。福教大の大学概要の表記があまりに異常であるがために、当たり前のものがすばらしく見えるだけです。