《ガラパゴス化する福岡教育大学》

何と「東アジア教員養成国際コンソーシアム」から退会とは !!!(2016年6月3日)


どこで誰が決定したのか

 学内掲示板を見ていましたら,ある会議の議事録に,またしても驚くべき記載がありました。「東アジア教員養成国際コンソーシアム」から退会する方向で手続きを進める,というのです。そのような方針はまったく初耳で,教育研究評議会でも教授会でも審議されたことがありません。

「東アジア教員養成国際コンソーシアム」とは

 「東アジア教員養成国際コンソーシアム」は,そのホームページによると,教員養成に関する国際共同研究の推進,教職志望学生の国際交流の促進,教員養成系大学教員の相互派遣,東アジアの教育の発展に資する事業の推進,を役割としています。

 このコンソーシアムは、2007(平成19)年に東京学芸大学で行われた「教員養成をめぐる国際シンポジウム」を契機にして、2009(平成21)年に発足しました。国際シンポジウムは、毎年開催され、第10回の今年は愛知教育大主催で行われましたが、土台となるコンソーシアムは、ここを軸にして中国、韓国、台湾の教員養成大学の協定校締結、相互交流、国際共同研究などをすすめるなど、東アジア教員養成をめぐる国際的共同研究機関として大きな役割を果たしています。現在モンゴルも含め44大学が加盟し、文科省も支援している教員養成の最も有力な国際組織です。

 目標には施策の実施を通して,東アジアの教員養成系大学と連携した博士課程特別コースの整備を進める,とあります。福教大に博士課程を設置することは,寺尾前学長の悲願であり,その担当者として文科省から副学長を迎え入れていたはずですので,福教大の方針とも合致するように思えます。なぜ,わざわざ退会するのでしょうか?

「HATOは死んだ」の嘘

 北海道教育(H)・愛知教育(A)・東京学芸(T)・大阪教育(O)の合同プロジェクトとして、その頭文字を取って『HATOプロジェクト』があります。「大学間連携による教員養成の高度化支援システムの構築」を目指しています。

 地理的に見て,この4大学は北海道~近畿にありますので,ここに福教大が加わって九州もカバーすれば,このプロジェクトはより完全なものになります。

 昨年の教授会である教員が,なぜHATOに加わらないのか,と質問しました。すると当時の櫻井理事は,次のように回答しました。「HATOとおっしゃるが,以前「HATOは死んだ」と言われたこともあった。本学は独自にしっかりやっていく」。

 しかし事実は全くちがっています。HATOプロジェクトは、共同研究の実績を上げており、博士課程にしてもHATOの枠組みが前提となっており、九州独自での設置は文科省の枠組みには入っていません。 広域拠点大学であり,規模としても上記の4大学に次ぐ福教大は,博士課程創設も含め、国内外の教員養成系大学と連携を深めてこそ,その役割を創造的に果たすことができるのではないでしょうか。

退会の本当の理由は?

 新たに加入するのを見送るというのではなく,すでに入っているコンソーシアムからわざわざ退会するというのは,何か特別な理由があるはずです。コンソーシアムの目的に異議を唱えて退会するというのであれば,教育大学の方針として全く理解できません。グローバル化や大学の国際化は,現在の国是と言ってもよいことだからです。 また,上記のとおり,博士課程設置は福教大の目標の一つです。目的には賛同するが運営に不満というのなら,何かそれに代替する組織やプロジェクトを立ち上げるべきですが,そのような動きも執行部は全く示していません。

 退会する教育研究上の合理的理由は、全く思いつきません。強く疑われるのは,今回の退会が,現在の福教大執行部の一貫する行動様式に基づくものではないか,ということです。

 それは,異論の排除です。昨年の学長選考は,櫻井氏の他に,鷲山恭彦・東京学芸大元学長(当時奈良教育大非常勤理事)が,学内の5名の教授からの推薦を受けて立候補しておられました。鷲山氏は2003(平成15)年から2011(平成21)年まで東京学芸大学長を務め,「東アジア教員養成国際コンソーシアム」発足はその任期中の業績です。所信表明書や教職員を前に行われた公聴会でも,「アジアの玄関口としての福岡」という地の利を活かした国際交流の活性化を訴えておられました。

 「東アジア教員養成国際コンソーシアム」からことさらに退会するというのは,昨年櫻井氏と学長を争った鷲山氏の影を何としても振り払いたい,ということではないでしょうか。

 これは推測です。執行部がそうでないと言われるのでしたら,教授会等で是非退会の教育研究上の合理的理由をお示しいただきたいと思います。退会するか,退会して何か別のプロジェクトを立ち上げるのか,といったことは,その後の全学的議論によって決めるべきことでしょう。

執行部の批判者排除・不当労働行為と認定される

 自らと見解を異にする者,批判を加える者を排除するというやり方は,寺尾学長の頃から繰り返されてきました。

 2012(平成24)年度からの給与減額に抗議して訴訟を提起した原告の教員を,教育研究評議員に任命することを拒否しました。

 2013(平成25)年度の学長選考において,選考結果を疑問視するビラ配りに参加した組合員を,大学院教育学研究科長に任命することを拒否しました。

 この2件は、今年1月,福岡県労働委員会から不当労働行為として救済命令が発せられています。

 また,昨年末に「大学教員の職務分担」として,教職教育院・教科等専門・教養専門のいずれかを選ぶよう調査が行われましたが,この時も,教授会等で執行部に対し批判的質問を行った教員が教職教育院への参加を認められなかった事例があります。

 これまで講座に割り振られていた委員会等の委員も,多くが執行部による指名に改められましたが,結果,少数の教員がいくつもの委員会を掛け持ちする一方,他方全くそういった仕事を割り当てられない教員も少なくありません。

多様性の尊重こそ、豊かな教育と研究の命

 教育研究評議会は,従来各講座から評議員が出ていましたが,今年度から教員代表の人数は半減以下となり,しかも学部長による指名に改められ,多様な意見が排除されることになりました。

 こうしたやり方は,学内の雰囲気を悪くします。4月14日の記者会見で櫻井学長が「排除するつもりはない」と語ったそうですが,実態は違います。当然士気が下がります。また,仕事が集中する教員にとっても,不公平感が強いでしょう。

 教授会で圧倒的多数で否決した案が、何とその日の内に、そのまま大学の決定とされる・・・異論の排除の最たるものでしょう。大学構成員は,教育研究の専門家として尊重されない(それ以前に,人としてのまともな対応をされない)という意味で,ハラスメントを受け続けてきたと言っても良いのです。

独善は、孤立化と衰退への道

 異論を排除しても,執行部が素晴らしいアイデアを持ち,強力に必要な改革を実行するならば,それを良しとする考えもあるでしょう。しかし残念ながら,福教大の現状はそれとも全く異なります。

 福教大の現状は異論の排除によって自らの耳を塞ぎ,外界から閉じこもるものです。教授会等での圧倒的な批判・反対意見を無視して,教育組織の改編等を強行する。英語名称を国際通用性に欠けるものに変えてしまう。国内外の連携を促進するコンソーシアムから脱退する。大規模教育大学の連携に加わらない。起こっていることは,単なる退縮であり,独善化であり,孤立化です。

 このままいけば,淘汰を待つよりないでしょう。福教大の衰退は,広域拠点大学としてのミッションが果たせなくなることを意味しますので,福岡県・九州の教育にとって大きな損失となります。

 最近の福教大の状況に強烈な違和感を持ち,批判者が多数存在する現在が,起死回生の決定的チャンスです。今こそ,現状を強く憂える学内外の多様な力を結集して,この状況を改めなければなりません。